脳卒中患者のバランスと歩行に対する前庭リハビリテーション療法の系統的レビューとメタ分析について

論文情報

この投稿は、~兵庫自費訪問リハビリ整体リ・サンテ宝塚~』が脳卒中や骨折、人工骨頭の手術後、腰痛のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、高齢者の転倒・介護予防に興味がある方に向けエビデンス情報を発信します。少しでも皆様のお役に立てればと思っています。

脳卒中患者は、運動機能や高次脳機能の障害により転倒のリスクが高く、脳卒中後の前庭機能障害、感覚障害、知覚機能障害は、転倒リスクの増加につながる可能性があると言われています。

そのため、姿勢の安定性と平衡感覚の改善を目的とした前庭リハビリテーションは、臨床において大きな注目を集めています。

まず、前庭リハビリテーション療法(VRT)は、視線の安定を促し、姿勢の安定性を改善し、患者の感覚統合を促進することを目的とした運動ベースの療法です。

VRTは、末梢前庭機能障害のある患者や前庭機能低下患者のバランスを改善するのに有効であり、パーキンソン病多発性硬化症,脳震盪脳性麻痺などの中枢神経系の損傷後の人のバランスと姿勢の回復を促進する効果的な介入とも言われています。

しかし脳卒中後の患者の歩行能力に対する前庭リハビリテーションの効果は、メタアナリシスを含まない系統的レビューで評価されており、GRADE基準で評価したエビデンスの確実性は全体的に非常に低かくなっています。

また、脳卒中後の患者の歩行能力に対するVRTの有効性に関する明確な結論は得られていません。

そこで今回は報告されている「脳卒中患者のバランスと歩行に対する前庭リハビリテーション療法の系統的レビューとメタ分析について」についてご紹介させていただきたいと思います。

脳卒中患者のバランスと歩行に対する前庭リハビリテーション療法の系統的レビューとメタ分析について

本日紹介する論文

参考文献

Vestibular rehabilitation therapy on balance and gait in patients after stroke: a systematic review and meta-analysis.2023

研究の目的

今回のシステマティックレビューで目的は、通常のリハビリテーションに前庭リハビリテーションを追加した場合の、リハビリテーションと比較した脳卒中後の患者のバランスと歩行の改善効果を評価すること

方法

  • システマティックレビューは、Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analysis statement(Additional file 1)に従って実施
  • 論文は2名の査読者により独立に検索され、適格基準に従って選択し重複論文は削除した
  • 検索された研究のタイトルと抄録がスクリーニングされ、最終的な包含を決定するために全文が掲載された研究を入手
  • 別の2人の査読者は、筆頭著者、発表年、参加者の情報(人数、年齢、性別)、脳卒中の特徴(病変のタイプ、部位、重症度、発症期間)など、研究の属性に関するデータを抽出した。介入の詳細とアウトカム指標に関するデータも抽出
  • 研究選択とデータ抽出に関する意見の相違は、コンセンサスが得られるまで議論するか、第3の査読者の関与により対応

バイアスのリスクとエビデンスの確実性の評価

  • 理学療法エビデンスデータベースのPEDro Scaleを用いて、含まれる研究のバイアスリスクを評価した
  • PEDroデータベースに含まれる研究のスコアがない場合は、2人のレビュアーが独立して評価した
  • エビデンスの確実性を評価するために、2人のレビュアーが独立してGRADEアプローチを用いた
  • 2人のレビュアーの間で評価に不一致がある場合は、第3のレビュアー(RCCT)に相談した。
  • データの統合と解析
  • 統計解析はReview Manager(RevMan)を用いて行った。

検索方法

  • Physiotherapy Evidence Database (PEDro)、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、China Biology Medicineデータベース、China National Knowledge Internet、VIPデータベース、Wanfangデータベースを含む電子データベースを検索し、脳卒中後の患者に対するVRTに関する発表済みのRCTを特定
  • 検索日は、入手可能な最も古いものから2023年6月1日まで
  • 言語や出版状況は制限なし
  • 検索語はMedical Subject Headingsとキーワード(前庭、脳卒中、バランス、姿勢、歩行、歩行)を組み合わせた
  • 中国語の同義語は中国語のデータベースで検索

参加資格

  • 脳卒中と診断され、脳卒中によるバランス障害と歩行障害が確認されたRCTを対象
  • 姿勢安定性に影響を及ぼすような脳卒中とは無関係の神経学的または整形外科的問題を呈している場合、脳卒中以前からバランスまたは歩行に障害があった場合、視野障害があった場合は除外

介入

VRTには、以下の前庭訓練法のうち少なくとも1つが含まれる

→視線安定運動(GSE)、眼頭運動、頭部運動、前庭刺激、前庭機能を強化する特定の運動または技術。

通常リハビリテーションは、脳卒中後の患者の特定された問題に応じてカスタマイズされた脳卒中リハビリテーションプログラムを指すが、VRTは含まれていない。

アウトカム評価

バランス

  • バーグバランススケール(BBS)
  • フグルマイヤーバランススケール(FM-B)
  • 活動特異的バランス信頼尺度(ABC)
  • ブルネルバランス評価(BBA)
  • 脳卒中患者の姿勢評価尺度によって測定されたバランス。特定のバランス機器によって測定された定量的結果も含まれた。転倒イベントはバランスの代理指標として用いられた。

歩行

  • TUG(timed up-and-goテスト)
  • 10m歩行テスト
  • 動的歩行指標
  • 機能的歩行評価
  • 歩行パラメータ。

※ 姿勢安定性に影響を及ぼすような脳卒中とは無関係の神経学的または整形外科的問題を呈している場合、脳卒中以前からバランスまたは歩行に障害があった場合、視野障害があった場合は除外


結果

バランス改善に対するVRTの効果

  • VRTがバランススコアを有意に改善することを示し(SMD = 0.59、95%CI(0.40、0.78)、p < 0.00001)を示し、エビデンスの確実性は中程度であった
  • 統計的に有意なBBSの改善(MD = 3.08、95%CI(1.86、4.31)、p < 0.00001)を示し、エビデンスの確実性は中程度であった
  • VRTとURの併用群では、FM-B(MD=2.74、95%CI(1.56、3.91)、p<0.00001)とABC(MD=7.42、95%CI(0.83、14.00)、p=0.03)の両方で有意な改善が認められ、エビデンスの確実性は中程度であった
    • 開眼時(MD = -0.70, 95% CI (-2.00, 0.59), p = 0.29)または閉眼時(MD = -3.53, 95% CI (-8.93, 1.88), p = 0.20)における圧心の移動面積の統計学的に有意な減少は確認されず、エビデンスの確実性は低いか非常に低いものであった
  • VRTとURの併用群における転倒の発生率はUR群の0.28倍であったが、統計学的有意性には至らず(RR = 0.28, 95% CI (0.05, 1.73), p = 0.17)、エビデンスの確実性は低かった
  • GSEまたは眼球運動によってVRTが提供された群では、バランスに関して統計的に有意な改善がみられた(SMD = 0.40、95%CI (0.17, 0.63)、p = 0.0006)
  • 頭部運動による前庭感覚刺激(SMD = 0.75、95%CI (0.43, 1.07)、p < 0.00001)、およびGSEと回転椅子トレーニングの併用(SMD = 0.85、95%CI (0.48, 1.22)、p < 0.00001)であり、エビデンスの確実性は中程度であった
  • 介入4週間未満のVRT群(SMD=0.50、95%CI(0.15、0.85)、p=0.005)および4週間のVRT群(SMD=0.64、95%CI(0.40、0.89)、p<0.00001)のいずれにおいても、バランスに統計学的に有意な改善がみられたエビデンスの確実性は中程度であった
  • 4週間以上のVRT群では、バランスに関して有意な改善はみられなかった(SMD = 0.42, 95% CI (-0.50, 1.33), p = 0.37)
  • VRTの種類と介入期間が異なればバランスを有意に改善しうることを示し(SMD=0.59、95%CI(0.40~0.78)、p<0.00001)、エビデンスの確実性は中等度であった

脳卒中罹患後のVRT効果

6ヵ月以内に脳卒中を発症した患者

→VRTとUR併用群で有意なバランス改善を達成し(SMD=0.56、95%CI(0.33、0.79)、p<0.00001)、エビデンスの確実性は中程度であった

3ヵ月以内に脳卒中を発症した患者

→VRTの効果、VRTとURの併用群では、バランスに関して統計的に有意な改善がみられ(SMD = 0.65、95%CI (0.36, 0.94)、p < 0.0001)、エビデンスの確実性は中程度であった

VRTの歩行改善効果

  • VRTはTUGを有意に低下させ(MD = -4.32、95%CI (-6.65, -1.99)、p = 0.0003)、エビデンスの確実性は中程度であった
    • TUGの低下は、4週間のVRT(MD=-0.59、95%CI(-8.17、6.99)、p=0.88)ではなく、エビデンスの確実性が中程度の4週間未満のVRT(MD=-4.71、95%CI(-7.16、-2.26)、p=0.0002)のサブグループで観察
  • 6ヵ月以内に脳卒中を発症した患者のVRTとURの併用群では、TUGにおいて統計学的に有意な改善がみられ(MD = -3.92、95%CI (-6.83, -1.00)、p = 0.008)、エビデンスの確実性は中程度であった
  • 脳卒中患者のVRTが患側の歩幅を改善することを示し(MD=2.33、95%CI(1.19、3.47)、p<0.0001)、エビデンスの確実性は中程度であった
  • VRT群では、患側の立脚相(SMD = -0.36, 95% CI (-0.98, 0.26), p = 0.26)も遊脚相(SMD = 0.44, 95% CI (-0.48, 1.37), p = 0.34)も統計学的に有意な改善は認められなかった
  • VRTと通常リハビリテーションの併用は、56人の患者を対象とした2つのRCT [32, 40] において、10m歩行テストで測定された歩行速度を改善しなかった(SMD = -0.44、95%CI (-1.61, 0.74)、p = 0.46)。

まとめ

このメタ分析研究では、769人の患者を対象とした15のRCTを対象とし、脳卒中後の患者におけるバランスと歩行に対するVRTの効果を検討した結果、特に6ヵ月以内に発症した脳卒中患者において、VRTが脳卒中後の患者のバランスと歩行を改善しうるという中程度の確度のエビデンスが得られました。

VRTは、脳卒中発症後6ヵ月以内の患者のバランスと歩行を改善するために、標準的な脳卒中リハビリテーションに加えて行うことが推奨されることが分かりました。

また、バランス改善において最も効果的なVRTは、GSEと4週間の回転椅子訓練を併用することであるとの結果が出たため、今後のリハビリでの介入方法の1案にしていただければと思います。

おまけ

文献内情報引用

脳卒中に対するVRTの潜在的メカニズム
前庭系は、感覚系と運動系の両方として働くことによって姿勢制御に関与しており、脳卒中後の患者におけるVRTの治療応用を裏付けている。

感覚系としての前庭情報は、体性感覚や視覚情報と密接に統合して中枢神経系に送られ、身体全体の位置や動き、周囲の環境を推定します。前庭系はまた、運動制御にも直接寄与しており、前庭脊髄路などの下行性運動経路は、前庭や他の種類の情報を受け取り、眼球、頭部、体幹の向きを制御し、姿勢運動を調整します。姿勢調節は、前庭核と前庭大脳皮質、前庭小脳、網様体、脊髄、上丘、脳神経XI核との相互結合によって行われます。VRTの有効性は、神経の回復または神経細胞の可塑性を促進することによって、中枢前庭神経系内の中枢処理を強化することによって達成される可能性があります。

兵庫県宝塚市の自費訪問リハビリ整体 リ・サンテとは

訪問リハビリ整体リ・サンテは、兵庫県宝塚市にオープンした脳卒中の方や人工関節の手術をされた方、足腰にお悩みを抱えている方を始め様々な方に密着し自費(保険外)での自宅訪問型のリハビリ整体です。

自費訪問リハビリ整体の特徴は

自宅を訪問させて頂き病院で行われるリハビリと整体院で行われる施術の要素を併せ持つ生活に密着した業界初の生活圏全般をサポートする”自費リハビリ施設となっています。

リハビリ整体リ・サンテには医療機関で脳卒中後のリハビリや、人工関節の術後、骨折後などの身体を回復させるためのリハビリに従事し、高齢者のフレイル対策や介護予防、転倒予防の研修を受けた理学療法士(国家資格)の資格を持ったスタッフが在籍しています。

ここで培った知識を生かし、自宅を訪問させて頂き、皆さんのお悩み事をを解決するために一人一人の身体の状態を把握し完全個別式のリハビリ&整体サービスを提供しています。

当整体院では単なる『マッサージ』や『筋力トレーニング』だけで終わらず、最新の予防医学をもとに個人個人のお身体に合わせたプログラムを作成し60分間完全マンツーマンで施術させて頂きます。

※お身体の関節筋肉の状態、バランス能力数値化し、そのデータは後日グラフを作成しお渡しさせて頂きお身体についてお伝えさせて頂きます。

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