「転倒リスク激減!― 膝の変形性関節症が示す『感覚』と『動き』の秘密

論文情報

この投稿は、~兵庫自費訪問リハビリ整体リ・サンテ宝塚~』が脳卒中や骨折、人工骨頭の手術後、腰痛のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、高齢者の転倒・介護予防に興味がある方に向けエビデンス情報を発信します。少しでも皆様のお役に立てればと思っています。

高齢者の転倒は、骨折や生活機能の低下独立性の喪失最悪の場合死亡に至る重大な問題です。

特に変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis: KOA)を有する高齢者は、通常の高齢者と比べ転倒率が著しく高く、報告では65歳以上の一般高齢者で約33%に対し、KOA患者では約50%に上るとされています。

転倒リスクの増大は、バランス制御の低下に起因するものであり、その制御には固有感覚、足底感覚、関節可動域、筋力、さらには痛みといった複数の要因が関与していると考えられます。

これらの要因の中で、どの要素がバランスに最も大きく影響するのか、その寄与の順序を明確にすることは、より効果的なリハビリテーションプログラムの設計に役立つ可能性が高いです。

そこで今回は、「「転倒リスク激減!― 膝の変形性関節症が示す『感覚』と『動き』の秘密」について報告されている論文をご紹介させていただきたいと思います。

「転倒リスク激減!― 膝の変形性関節症が示す『感覚』と『動き』の秘密

本日紹介する論文

参考文献

Balance Control is Sequentially Correlated with Proprioception, Joint Range of Motion,Strength, Pain, and Plantar Tactile SensationAmong Older Adults with Knee Osteoarthritis.2024

研究の目的

1. 変形性膝関節症を有する高齢者と健常高齢者の間で、バランス能力および固有感覚、足底感覚、関節可動域、筋力、痛みの各評価項目に有意な差が存在するかを比較検討する。

2. BBSスコアと各評価項目(固有感覚、足底感覚、関節可動域、筋力、痛み)との相関関係を、年齢やBMIの影響を統制しながら明らかにする。

3. 多変量線形回帰解析および因子分析により、各要因がバランス制御に及ぼす影響の大きさ・順序を定量的に評価し、リハビリテーションの介入優先順位を提案する。

ことが目的

方法

本研究は横断的研究(cross-sectional study)として実施され、2021年3月~2022年11月にデータ収集が行われました。

対象

対象

・65歳以上の高齢者を対象とし、最終的に240名が解析に含まれた

 ● 変形性膝関節症群:124名(女性84名、男性40名)

 ※診断は同一の整形外科医によるX線評価(Kellgren–Lawrence分類1~4)

 ● 健常群:116名(女性72名、男性44名) 

除外基準

・両側性のKOAを有する者

・下肢の神経筋疾患、または直近3か月以内の下肢関節手術・骨折歴のある者

・歩行補助具の使用者

・重度の認知機能障害が認められる者

介入方法とアウトカム

本研究では、バランス制御に影響すると考えられる5つの要因について、以下の手法で評価を行っています

1. 固有感覚(Proprioception)

 – 対象の膝関節および足関節における運動知覚閾値(角度の変化を感知する閾値)を測定

 – 測定には、専用のプロプリオセプションテスト装置(Sunny, AP-II)を使用し、膝(ICC: 0.923~0.946)および足首(ICC: 0.737~0.935)の信頼性が確認されている

2. 足底感覚(Plantar Tactile Sensation: PTS)

 – Semmes-Weinsteinモノフィラメント(6種類:2.83~6.65ゲージ)を用いて、母趾基部、第一・第五中足骨頭、足弓、踵の各部位に対し、刺激に対する反応を評価

 – 各部位における最小検出ゲージを閾値として記録し、感覚低下の程度を定量化(信頼性:ICC 0.83~0.86)

3. 関節可動域(Range of Motion: ROM)

 – 股関節、膝関節、足関節の可動域を、Universal Goniometer(ゴニオメーター)により測定

 – 測定手順は、各関節に対して正確なアライメントを保ちながら実施し、3回の試行の平均値を採用(信頼性:各関節ICC >0.90)

4. 筋力

 – IsoMed 2000を用い、股関節、膝関節、足関節の屈曲・伸展筋力を等速性条件下で評価

 – 各試行で得られたピークトルク値を、参加者の体重で正規化して(N·m/kg)解析

 – 各関節・筋群の評価は3回実施し、最大値を採用(信頼性:ICC 0.77~0.98)

5. 痛み

 – Visual Analogue Scale(VAS)を使用し、0(無痛)~10(最強の痛み)で現在の痛みの程度を評価

6.バランス能力

– Berg Balance Scale(BBS)**を用いて14項目・合計56点満点で評価

各項目は0~4点で採点され、信頼性は非常に高い(ICC 0.98)

統計解析

正規性に基づいてt検定またはMann–Whitney U検定を用い、また各要因とBBSとの相関はPearsonまたはSpearman相関係数(年齢、BMIを統制)で評価

さらに、因子分析によって各カテゴリー(筋力、足底感覚、固有感覚、関節可動域)の代表因子を抽出し、多変量線形回帰モデルを構築して、各要因のバランス制御への寄与度を定量化

比較

対象者をKOA群と健常群に分け、各測定項目およびBBSスコアの群間比較を実施

結果

群間比較

  • 変形性膝関節症群は健常群と比較して、BBSスコアが有意に低い(変形性膝関節症群:平均52.63点、健常群:平均53.85点;p=0.008)
  • 固有感覚については、膝および足関節の運動知覚閾値が変形性膝関節症群で大きく、感知精度の低下が認められた(p値は0.001〜0.016の範囲)
  • 足底感覚の閾値も全般的に高く、感覚低下が示唆された(各部位でp<0.005~0.002)
  • 関節可動域は特に膝屈曲や足関節の動作において制限があり、筋力も各関節で低下していた(p<0.001~0.014)

相関分析

• 変形性膝関節症群において、BBSスコアは各評価項目と統計的に有意な相関を示した。

 – 固有感覚:r=-0.332~-0.501

  →負の相関があり、固有感覚の低下(数値が大きくなる)とバランス能力の低下が関連

 – 関節可動域:r=0.212~0.508

  →正の相関があり、関節可動域の拡大とバランス能力の向上が関連

 – 筋力:r=0.236~0.336

  →正の相関があり、筋力の増加とバランス能力の向上が関連

 – 痛み:r=-0.340

  →負の相関があり、痛みの増加とバランス能力の低下が関連

 – 足底感覚:r=-0.197~-0.291

  →負の相関があり、足底感覚の低下とバランス能力の低下が関連

• 健常群では、BBSスコアは主に固有感覚(r=-0.207~-0.379)および筋力(r=0.212~0.410)と関連し、足底感覚や関節可動域との有意な相関は認められなかった

多変量回帰分析

変形性膝関節症群に対する回帰モデルは以下の通りで、各要因の寄与度(係数の絶対値の大きさ)から、バランス制御に対する影響の順序が明確となった:

 BBS = 54.41 + (0.668 × 筋力) – (0.579 × 足底感覚) – (1.141 × 固有感覚) + (1.054 × 関節可動域) – (0.339 × 痛み)

この結果から、固有感覚が最も大きな影響(負の係数が大きい)を及ぼし、次いで関節可動域筋力、痛み、足底感覚の順でバランスに寄与していると解釈できる

健常群では、回帰モデルにおいて固有感覚と筋力のみが有意な変数として残った

まとめ

• 本研究は、変形性膝関節症を有する高齢者と健常高齢者との間で、バランス能力およびその関連要因(固有感覚、足底感覚、関節可動域、筋力、痛み)の評価を行い、各要因のバランス制御への寄与度を定量的に解析しました。

結果として、KOA患者では全ての要因がBBSスコアと有意に関連する一方、特に固有感覚の低下が最も強くバランス低下に影響していることが明らかになりました。

また、回帰分析の結果、バランス改善のためには、①固有感覚の改善、②関節可動域の拡大、③筋力の強化、④痛みの軽減、⑤足底感覚の刺激という順序で介入を行うことが理にかなっていると考えられます。

理学療法士としての臨床応用

①固有感覚トレーニング  

– 関節位置覚や運動知覚を改善するため、バランスボードや不安定面上でのトレーニング、目隠し状態でのエクササイズなどを積極的に導入する。

関節可動域(ROM)の改善

– 関節モビライゼーション、ストレッチング、動的可動域訓練を実施し、関節の柔軟性を高める。

筋力強化

– 低負荷・高回数のレジスタンストレーニング、または等速性トレーニングにより、特に膝および足関節周囲の筋力向上を図る。

痛みの管理

– 温熱療法、電気刺激、薬物療法、または適切な運動負荷の設定により、痛みによる活動制限を軽減する。

足底感覚の刺激

– 裸足歩行、感覚刺激パッド、または足底マッサージ等により、足底の感覚受容性を改善し、補完的にバランス維持をサポートする。

今回ご紹介した論文がリハビリ内容を考えていくうえで、1つの方法案として組み込み、より良いリハビリを提供いただければと思います。

兵庫県宝塚市の自費訪問リハビリ整体 リ・サンテとは

自費訪問リハビリ整体リ・サンテは、兵庫県宝塚市にオープンした脳卒中の方や人工関節の手術をされた方、足腰にお悩みを抱えている方を始め様々な方に密着し自費(保険外)での自宅や施設への訪問型のリハビリ整体です。

自費訪問リハビリ整体の特徴は

自宅や施設を訪問し病院で行われるリハビリと整体院で行われる施術の要素を併せ持つ生活に密着した業界初の生活圏全般をサポートし生活の質の向上を目的とした”自費リハビリ施設となっています。

リハビリ整体リ・サンテには医療機関で脳卒中後遺症の方や、人工関節の術後、骨折後などの身体を回復させるためのリハビリに従事し、高齢者のフレイル対策や介護予防、転倒予防の研修を受けた理学療法士(国家資格)の資格を持ったスタッフが在籍しています。

ここで培った知識を生かし、自宅や施設を訪問させて頂き、皆さんのお悩み事をを解決するために一人一人の身体の状態を把握し完全個別式のリハビリ&整体サービスを提供しています。

当自費リハビリ整体では単なる『マッサージ』や『筋力トレーニング』だけで終わらず、最新の予防医学をもとに個人個人のお身体に合わせたプログラムを作成し30分~60分間完全マンツーマンで施術させて頂きます。

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