健康な高齢者の歩行スピードを決める筋肉とは?― 男性と女性で異なる「歩行を支える筋力構造」 ―健康な高齢者の歩行スピードを決める筋肉とは?

論文情報

この投稿は、~兵庫自費訪問リハビリ整体リ・サンテ宝塚~』が脳卒中や骨折、人工骨頭の手術後、腰痛のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、高齢者の転倒・介護予防に興味がある方に向けエビデンス情報を発信します。少しでも皆様のお役に立てればと思っています。

最近、歩くのが遅くなった」「歩幅が狭くなった」「ふらつくようになった」――
こうした変化は、加齢に伴う筋力低下によって起こることが知られています。

ただし、「どの筋肉の弱り」が歩行能力に最も影響するのかは、まだ十分にわかっていません。
特に、男性と女性では歩き方や骨格が異なるため、関係する筋群も違う可能性があります。

今回紹介する論文は、『健康な高齢者における下肢の筋力と歩行パラメータの関係を男女別に詳細に分析した初めての研究』です。

そこで、この論文を元に『健康な高齢者の歩行スピードを決める筋肉とは?― 男性と女性で異なる「歩行を支える筋力構造」 ―健康な高齢者の歩行スピードを決める筋肉とは?』をご紹介します。

健康な高齢者の歩行スピードを決める筋肉とは?― 男性と女性で異なる「歩行を支える筋力構造」 ―健康な高齢者の歩行スピードを決める筋肉とは?

本日紹介する論文

参考文献

Relationship between Muscle Strength and Gait Parameters in Healthy Older Women and Men.2023

研究の目的

今回の研究の目的は、、、

健康な高齢男性および女性において、下肢の複数の筋群(9筋群)の筋力と歩行パラメータ(速度・歩幅・ステップ幅など)の関係を明らかにし、性差による特徴を明確化すること です。

これまでの研究では、膝伸展筋や握力のみを指標とする報告が多く、
「どの筋群が歩行のどの要素と関連するか」や「男女での違い」は不明確でした。

方法

研究デザインは、横断的観察研究 です

対象

対象

• 地域在住の健康高齢者69名(男性35名、女性34名)
• 年齢:平均76.7歳
• 自立歩行が可能

除外基準

脳卒中・パーキンソン病などの神経疾患

重度の整形外科疾患(下肢変形・脚長差など)

人工関節・下肢金属固定

6ヶ月以内の下肢外傷

心血管疾患のリスクが高い者

評価項目

身体測定

• 身長・体重・筋肉量・体脂肪率をInBody 720で測定。

筋力測定(下肢9筋群+握力)

  • 等速性筋力測定装置(Isomed 2000)を用い、利き脚の以下の筋群の最大等速性筋力(60°/秒)を測定。
  1. 足関節:底屈・背屈
  2. 膝関節:屈曲・伸展
  3. 股関節:屈曲・伸展・外転・内転
    すべての値は体重あたり(Nm/kg)に正規化。
  • 握力は立位90°屈肘位で2回測定し最大値を採用。

歩行解析

3Dモーションキャプチャと床反力センサー付きトレッドミルを使用し、2分間の歩行を解析。
測定項目:
• 歩行速度(m/s)
• ストライド長(歩幅)
• ストライド時間
• 立脚時間
• ステップ幅

統計解析

• 性別間の比較:Studentのt検定またはMann–Whitney U検定
• 相関分析:ピアソンの相関係数(r)
 - r=0.10〜0.39:弱い相関
 - r=0.40〜0.69:中等度相関
 - r≥0.70:強い相関
• 歩行パラメータを従属変数、各筋群筋力を独立変数とした線形回帰分析を実施(p<0.05を有意とした)。

結果

基礎データ

• 男性は女性より身長・体重・筋肉量が有意に高く(p<0.001)、体脂肪率は低かった(p<0.001)。
• 全ての下肢筋群で男性の方が相対筋力が高かった。

歩行特性

• 男性は女性よりストライド長(歩幅)が有意に長い(p<0.001)。
• 歩行速度・ステップ幅には有意差なし。

相関結果(筋力と歩行パラメータの関係)

男性
• 歩行速度は足底屈・膝伸展・股伸展筋力と中等度の正相関(r=0.36〜0.49)。
• ストライド時間および立脚時間はこれらの筋群と負の相関(r=-0.42〜-0.59)。
• ステップ幅は股外転筋力と負の相関(r=-0.41)。

女性
• 歩行速度は膝伸展・股屈曲・股伸展・外転・内転筋と有意な正相関(r=0.43〜0.54)。
• 歩幅(stride length)は股伸展・膝伸展筋力と関連。
• ステップ幅は股外転・内転筋力と強い負の相関(r=-0.54前後)。
• 握力も歩行速度と有意に相関(r=0.42)。

回帰分析

男性
• 歩行速度、ストライド時間、立脚時間、ステップ幅は筋力で16.6〜44.3%説明可能。
• 特に股伸展・膝伸展・底屈筋群が主要な予測因子。

女性
• 歩行速度とステップ幅において有意な予測モデル(R²=21.8〜36.1%)。
股関節周囲筋群(屈曲・伸展・外転・内転)の影響が顕著。

まとめ

①歩行に関与する筋群は男女で異なる


• 男性では「前後方向の推進筋群(股・膝・足関節の伸展筋)」が歩行速度を決めている。
• 女性では「多方向安定筋群(股関節周囲筋)」が速度や安定性に関与。

つまり、男性は“推進力”、女性は“安定性”が歩行能力を左右していると考えられる。

②性差を生む要因


• 女性は骨盤が広く前傾しており、歩行時に骨盤の回旋・傾斜が大きい。
 そのため、股外転・内転筋による骨盤安定化の需要が高い


• 男性はストライド長で速度を上げる傾向があり、伸展筋の出力が重要となる。

③ 握力との関係

握力は下肢筋力を直接表さないが、全身的な筋機能の総和指標として、特に女性で歩行機能との関連を示した。


在宅高齢者の簡易スクリーニングにも有用と考えられる。

④ 臨床的意義


高齢女性では下肢筋の協調性が歩行に強く関与し、複数筋群のバランス強化が重要。


男性では、推進力に関与する下肢伸展筋群の筋出力トレーニングが優先されるべき。


この結果は、性別に応じた歩行リハビリの最適化に直結する。

理学療法士としての臨床応用

▶ 男性への運動指導

目的:推進力と歩行速度の改善
• 重点筋群:大殿筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋
• 主な運動:
 - スクワット・レッグプレス
 - ステップアップ
 - カーフレイズ(つま先立ち)


• 目標:歩幅を広げ、速度を維持できる「推進力型歩行」へ。

▶女性への運動指導

目的:安定性と骨盤制御の向上
• 重点筋群:中殿筋・大腿内転筋群・腸腰筋
• 主な運動:
 - サイドステップ・ヒップアブダクション
 - セラバンドを使った外転/内転運動
 - ブリッジ+外転


• 目標:ステップ幅の安定化とバランス能力向上。

▶ 共通戦略

• 握力測定を“全身筋機能のスクリーニング”として活用。


• 歩行練習では、速度・リズム・重心移動を性差に応じて調整。


• 抵抗運動+歩行トレーニングの併用が最も効果的。

兵庫県宝塚市の自費訪問リハビリ整体 リ・サンテとは

自費訪問リハビリ整体リ・サンテは、兵庫県宝塚市にオープンした脳卒中の方や人工関節の手術をされた方、足腰にお悩みを抱えている方を始め様々な方に密着し自費(保険外)での自宅や施設への訪問型のリハビリ整体です。

自費訪問リハビリ整体の特徴は

自宅や施設を訪問し病院で行われるリハビリと整体院で行われる施術の要素を併せ持つ生活に密着した業界初の生活圏全般をサポートし生活の質の向上を目的とした”自費リハビリ施設となっています。

リハビリ整体リ・サンテには医療機関で脳卒中後遺症の方や、人工関節の術後、骨折後などの身体を回復させるためのリハビリに従事し、高齢者のフレイル対策や介護予防、転倒予防の研修を受けた理学療法士(国家資格)の資格を持ったスタッフが在籍しています。

ここで培った知識を生かし、自宅や施設を訪問させて頂き、皆さんのお悩み事をを解決するために一人一人の身体の状態を把握し完全個別式のリハビリ&整体サービスを提供しています。

当自費リハビリ整体では単なる『マッサージ』や『筋力トレーニング』だけで終わらず、最新の予防医学をもとに個人個人のお身体に合わせたプログラムを作成し30分~60分間完全マンツーマンで施術させて頂きます。

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