この投稿は、『~兵庫自費訪問リハビリ整体リ・サンテ宝塚~』が脳卒中や骨折、人工骨頭の手術後、腰痛のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、高齢者の転倒・介護予防に興味がある方に向けエビデンス情報を発信します。少しでも皆様のお役に立てればと思っています。
まず、固有感覚受容(プロプリオセプション)とは何か知っていますか?
固有感覚とは、関節の感覚、位置、動き、また筋収縮に伴う力、重さ、知覚されるタイミングの感覚を指します。この固有感覚への固有受容入力は筋、関節、皮膚の受容器から受け取った求心性情報から得られます。
慢性腰痛症(CLBP)の患者は、腰部における固有受容能が低下し、腰部Repositioning Error(RE)が大きいというエビデンスがありますが、CLBPの被験者と無痛の被験者との間に有意差がないという研究結果もあります。
また、キネシオロジーテープ(KT)には、
(1)神経抑制による疼痛の軽減
(2)筋緊張の異常低下による亜脱臼関節の再ポジショニング
(3)筋膜や軟部組織を持ち上げてスペースを作り、循環を改善する
(4)弱った筋肉を強化することで筋機能を矯正する
(5)プロプリオセプションを改善するために感覚刺激を与える
など、いくつかの利点が報告されています。
KTとプラセボのテーピングを比較して、痛みや障害に対する効果を比較した研究もありますが、その結果、テーピング後に痛みや障害のレベルが有意に低下した研究 や、CLBP患者においてKTがプラセボよりも優れていると報告した研究もあります。
一方、介入後の疼痛や障害の有意な減少を認めなかった研究や、CLBP患者に対するKTの適用はプラセボテーピングよりも優れていなかったとする研究もあります。
上記のようなこれまでの研究では、非特異的CLBP患者において、多次元ツールであるSF-MPQを用いてKTが疼痛に及ぼす効果を評価したことはなく、VASまたはNRSによって疼痛を測定した研究となっています。
そこで、『非特異的CLBP患者において、腰椎にKTを施すと、プラセボ群と比較して、腰部プロプリオセプション、疼痛、機能障害が改善する』という仮説を立て、SF-MPQを用いて報告を行った以下の論文をご紹介します。
「非特異的慢性腰痛患者における痛み、機能障害、腰部固有感覚受容に対するキネシオロジーテーピングの短期効果」についてご紹介させていただきたいと思います。
非特異的慢性腰痛患者における痛み、機能障害、腰部固有感覚受容に対するキネシオロジーテーピングの短期効果(二重盲検無作為化試験)
本日紹介する論文
研究の目的
本研究の目的は
非特異的慢性腰痛患者において、腰部固有感覚受容、疼痛、機能障害に対するKTの短期的効果を検討すること
また、疼痛強度、機能障害、腰部リポジショニングエラーとの関連も評価
対象
●25~50歳の非特異的CLBP患者30人(男性15人、女性15人)
※プラセボ群とKT群の参加者の平均年齢はそれぞれ42歳と44歳
方法
●プラセボ群(緊張を伴わないKT)と実験群(緊張を伴うKT)のいずれかに、コンピューターで作成された無作為化スキームに従って無作為に割り付けます。
●奇数番号の人はプラセボ群に、偶数番号の人はKT群に割り付けます。
●盲検化された研究者(研究者1)がデータ収集と解析を行い、研究者2が参加者の登録と介入を行い、潜在的なバイアスの原因を最小化します。
●両群KTを3日間貼付します。
●この条件下でアウトカム評価を行います。
介入群(A)
●幅5cm、厚さ0.5mmの防水粘着テープ(NST-05002、韓国製)を使用します。
●垂直、水平、および垂直ストリップに対して45°の角度の2本を含む4本のI-ストリップを、腰部の最大疼痛点の上に星型に重なるように15~25%の張力で装着します。
※貼付(ストリップ)の中央部は両端より先に圧着され、すべてのストリップはテープの中央部で交差しています。
プラセボ群(B)
プラセボ群には、腰部の最大痛点に同じテープのIストリップス1枚をテンションをかけずに横方向に貼付します。
アウトカム
介入前と介入3日後に、疼痛強度の測定(SF-MPQ)、機能障害の測定(Oswestry Disability Index: ODI)、バブル傾斜計を用いた腰椎Repositioning Errorの測定を行います・
SF-MPQ
SF-MPQは痛みの感覚、感情、評価の次元を評価する多次元的なツールであり、3つの部分から構成されています。
1つ目:15個の疼痛記述子(感覚カテゴリーから11個、感情カテゴリーから4個)
2つ目:Visual Analogue Scale(VAS)
3つ目:現在の疼痛強度(PPI)
ODI
腰痛や下肢痛による日常生活活動(ADL)障害を評価する自己記入式の評価となっており、世界でも広く用いられている評価scaleとなっています。
腰椎Repositioning Error(腰椎RE)
Repositioning Errorたは直訳すると再配置エラーと言う意味になります。
プロプリオセプションの間接的な指標である腰椎REは、バブルインクリノメーターを用いて測定します。
参加者は、衣服からの感覚的な手がかりを減らすため、ショーツのみを着用しセラピストがT12-L1およびS1脊髄レベルにマーカーで印をつけ、2台のバブルインクリノメーターを同時に使用し立位での腰椎ROMの屈曲と伸展を測定します。
その後、リポジショニングの正確さは、参加者が脊柱中立位から45°と60°屈曲位までの2つの異なる体幹位置と、脊柱中立位から15°伸展位まで各10秒保持し、30秒の休憩をはさみ3セット行い平均値で割り出します。
※REは、目標位置と実際に測定された角度との間の一定誤差(CE)と定義され、CEは、特定の方向(正または負)への誤差を示し、絶対誤差(AE)は、目標位置からの符号なしの偏差であるため、誤差の方向に関係なく、絶対的な再ポジショニング誤差を反映するとされています。
結果
- KT群ではテーピング3日後に疼痛(総スコア(S/A)、VAS、PPI)および機能障害スコアが有意に改善したが、RE(AEまたはCE)については3つの角度(屈曲45°、60°、伸展15°)のいずれにおいても有意差は認められなかった。
- プラセボ群では、緊張を与えないプラセボテーピングを3日間行った結果、PPIのみが有意に減少した。また、痛みの総スコア(S/A)のみ群間で有意差が認められた。
- 腰椎伸展15°のCEのみが障害と有意な中等度の正の相関を示し障害が強い人ほどREが大きい。
まとめ
今回の報告ではKT群ではプラセボ群に比べ、KT群では痛みの総スコア(S/A)のみが減少しました。これは、KTが、プラセボテーピングでは影響を与えられなかった痛みの他の側面(感覚、感情)に影響を与えることができることを示しているかもしれません。
また、プラセボ群ではPPIが減少したことから、CLBP患者においてプラセボテーピングはプラセボ効果により疼痛強度を減少させる可能性がある可能性があります。
KTとプラセボテーピングは両方ともCLBP患者の疼痛を軽減するため、しっかりと患者様の評価を行いKTを使用することでアプローチ方法の幅も広がる可能性もあります。
今回疼痛の感情的な部分の軽減は認めたが、認知面や侵害受容器などの観点からのアプローチも必要と考えるのでこの方法だけを行うのではなく、あくまで一つの考え方と言う感覚でとらえて頂ければと思います。
今回、KTの触覚刺激がプロプリオセプションの改善に十分でなかったのは、短期間の評価やテーピングの方法によるものと報告されています。
また、今回の報告の反省点は非テーピング群を作成していないこと、異なるテーピング張力での比較を行っていなかったことと挙げられています。
おまけ
テーピングの張力による効果
75~100%の張力は筋力低下や関節位置の矯正
25~50%の張力は筋起始部から筋停止部にかけての筋力低下による筋の活性化
15~25%の張力は筋停止部から筋起始部にかけての筋の抑制
0~15%の張力 は浮腫の軽減
に使用されるとも言われています。
兵庫県宝塚市の自費訪問リハビリ整体 リ・サンテとは
訪問リハビリ整体リ・サンテは、兵庫県宝塚市にオープンした脳卒中の方や人工関節の手術をされた方、足腰にお悩みを抱えている方を始め様々な方に密着し自費(保険外)での自宅訪問型のリハビリ整体です。
自宅を訪問させて頂き病院で行われるリハビリと整体院で行われる施術の要素を併せ持つ生活に密着した‟業界初の生活圏全般をサポートする”整体院となっています。
リハビリ整体リ・サンテには医療機関で脳卒中後のリハビリや、人工関節の術後、骨折後などの身体を回復させるためのリハビリに従事し、高齢者のフレイル対策や介護予防、転倒予防の研修を受けた理学療法士(国家資格)の資格を持ったスタッフが在籍しています。
ここで培った知識を生かし、自宅を訪問させて頂き、皆さんのお悩み事をを解決するために一人一人の身体の状態を把握し完全個別式のリハビリ&整体サービスを提供しています。
当整体院では単なる『マッサージ』や『筋力トレーニング』だけで終わらず、最新の予防医学をもとに個人個人のお身体に合わせたプログラムを作成し60分間完全マンツーマンで施術させて頂きます。
※お身体の関節や筋肉の状態、バランス能力を数値化し、そのデータは後日グラフを作成しお渡しさせて頂きお身体についてお伝えさせて頂きます。
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