「脳卒中後の“膝が曲がらない歩き方”はなぜ起きる? ― スティッフ・ニー歩行の仕組みとリハビリの鍵」

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この投稿は、~兵庫自費訪問リハビリ整体リ・サンテ宝塚~』が脳卒中や骨折、人工骨頭の手術後、腰痛のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、高齢者の転倒・介護予防に興味がある方に向けエビデンス情報を発信します。少しでも皆様のお役に立てればと思っています。

脳卒中の後遺症として最も多い機能障害のひとつに「歩行障害」があります。杖や装具を使いながらも、なんとか自分の足で歩けることは患者さんの自立や生活の質を大きく左右します。しかし、その歩行はしばしば正常とは異なるパターンを呈し、そのひとつが スティフ・ニー歩行(Stiff-Knee gait) です。これは「振り出し期(swing phase)に膝が十分に曲がらないため、足が突っ張ったように前に振り出される」歩き方を指します。

この歩行パターンはつまずきや転倒のリスクを高め、歩行効率を下げ、活動範囲を制限する大きな要因となります。では、なぜ膝が曲がらなくなってしまうのでしょうか?その原因は「筋肉が硬いから」だけでは説明できません。

今回はStiff-Knee gaitについての最新の論文を、できるだけ分かりやすくご紹介します。

「脳卒中後の“膝が曲がらない歩き方”はなぜ起きる? ― スティッフ・ニー歩行の仕組みとリハビリの鍵」

本日紹介する論文

参考文献

Mechanisms of Post-stroke Stiff-Knee Gait A Narrative Review.2025

研究の目的

本レビューの目的は以下の3点です。

  1. スティッフ・ニー歩行の定義を整理し、臨床的特徴を明確にすること
  2. 神経生理学的および力学的メカニズムを整理し、どの因子がどのように影響するかを批判的に検討すること
  3. 既存の介入研究や観察研究を踏まえ、今後の研究方向性と臨床応用の指針を提示すること

方法

本研究は Narrative Review(総説) であり、特定のRCTや実験を統合したメタアナリシスではありません。著者らは過去の観察研究・介入研究・基礎研究を幅広く収集・精読し、以下の観点で整理しています。


• スティッフ・ニー歩行の定義・評価指標
• 神経生理学的要因(筋反射性、筋緊張、運動協調性など)
• 力学的要因(歩行推進力、関節モーメントなど)
• 既存介入の効果と限界
• 研究の矛盾点と今後の課題

対象

対象

• 脳卒中後の歩行者を対象とした観察研究や介入研究
• スティッフ・ニー歩行あるいは膝屈曲制限・膝の振り出し機能に関連する研究
• 神経生理学的因子(筋反射性、筋トーン、運動協調性、筋活動パターンなど)を扱った研究
• 力学・運動力学的因子(膝関節モーメント、筋‐骨格制約、歩行推進力など)を扱った研究

除外基準

• 脳卒中以外の疾患(たとえば変形性膝関節症やパーキンソン病など)を対象とした研究
• 膝屈曲制限とは無関係な歩行異常(例:足関節ドロップ、後遺障害が主に足関節にあるもの)
• 明確にスティッフ・ニー歩行を検討対象にしない研究
• 理論的・シミュレーション研究のみ、または定性的報告のみで運動学・神経生理のデータが乏しい研究
• サンプル数が著しく少ない研究や信頼性が低い報告(ただし総説ではこれを明示的に除外すると記載されているわけではない)

介入方法

総説自体に新規介入はありませんが、既存文献で用いられた代表的介入は以下です。

• ボツリヌス療法:大腿直筋などの痙縮を抑制し膝屈曲を改善する試み
• 電気刺激療法(FES):タイミングを合わせてハムストリングスを促通
• ストレッチ・徒手療法:拘縮や異常トーンの抑制
• ロボット歩行訓練:膝屈曲運動のリズムを再学習させる試み
• 筋力トレーニング:ハムストリングスや股関節屈曲筋の出力強化

比較

著者らは介入効果を「単一因子仮説」との整合性で検討しています。

  • 四頭筋過反射性が主因とされてきたが、これを抑制しても全員が改善するわけではない
  • 筋緊張(spasticity)を指標化しても、膝屈曲角度との相関は一貫しない
  • 協調性障害や推進力低下の方が説明力を持つケースもある

つまり、患者ごとに主因は異なり、画一的治療は不十分という点が強調されています。

結果(レビューを通じて著者らが導き出した仮説・整理)

スティッフ・ニー歩行の定義と表現

• スティッフ・ニー歩行(Stiff-Knee gait)は、振り出し期(swing phase)における膝屈曲の減少を特徴とする歩行異常を指す。


• 通常、歩行時の膝屈曲は、つま先が地面を離れてからの初期加速とクリアランス(地面から足がつかないよう保つ距離)獲得のために不可欠。


• 具体的には、膝屈曲角度の最大値が低下する、屈曲開始が遅れる、屈曲速度が低下する、などの変化が観察される。

神経生理学的メカニズムの候補

  1. 四頭筋過反射性:膝屈曲を阻害
  2. 筋緊張亢進:大腿直筋トーン増加による屈曲制限
  3. 運動協調障害:拮抗筋同時収縮や筋活動のタイミング異常
  4. 推進力低下:振り出しに必要なエネルギー不足

著者の結論

• 単一因子で説明するのは不可能
• 患者ごとに異なる要因が組み合わさって現れる
• 定量的な定義と多因子モデルが必要

結論とまとめ

• スティッフ・ニー歩行は脳卒中後に頻発する歩行障害であり、効率性・安全性を低下させる


• その原因は単純な「筋肉の硬さ」ではなく、神経生理学的因子と力学的因子の相互作用である


• 介入研究の効果は限定的で、患者の主因に応じた個別化アプローチが求められる


• 今後の研究には操作的定義の統一、大規模・縦断研究、因子別アプローチの介入試験が必要

理学療法士としての臨床応用

患者アセスメントの精緻化

• 単に「膝が曲がらない/曲がりにくい」と観察するだけでなく、振り出し期の膝屈曲角度、屈曲速度、屈曲開始時期といった定量的指標を測定・記録することが重要。
• 筋反射性(腱反射、H反射など)、筋トーン(MASなどの評価)、筋力・筋持久力(ハムストリングス・大腿四頭筋など)、筋活動タイミング(筋電図)、歩行時の推進力(床反力測定など)など、複数因子を包含する評価を行うべき。
• 患者間異質性を考慮して、麻痺重症度、発症からの時間経過、関節可動域制限・拘縮の有無なども含めて層別化する。

仮説駆動型個別アプローチ

• すべての症例に同じ治療を適用するのではなく、どの因子(過反射性、トーン亢進、協調性障害、推進力低下など)が比較的強く関与しているかを仮定して、その因子をターゲットとした治療を優先する方針が望ましい。


• 例:四頭筋過反射性が主要因と考えられる場合 → 抑制的アプローチ(神経ブロック、ボツリヌス療法、抑制的電気刺激など)
• 例:推進力低下が支配的と考えられる場合 → 下肢筋力強化、歩行補助装具、ロボット支援訓練、部分荷重トレーニングなど
• 例:運動協調性障害が強いと推察される場合 → タイミング訓練、反復訓練、運動学習課題(随意制御訓練、バイオフィードバックなど)

複合訓練・段階的負荷設計

• 1要因にのみアプローチするのではなく、複数因子を組み合わせた統合的リハビリが有用である可能性が高い。例えば、筋力強化 × 抑制アプローチ × タイミング制御訓練を組み合わせて用いる。
• 患者の進展に応じて、刺激強度や負荷量、運動課題の難易度を段階的に調整する。

介入効果モニタリングと再評価

• 介入開始前・中間・終了後に、膝屈曲角度、歩行速度、つまづき頻度、エネルギー消費効率など多様なアウトカムを定期的に評価すべき。
• 介入効果が思わしくない場合、仮説を再検討(例:別の因子が主因になっている)し、治療戦略を軌道修正する (リトリエンジニアリング型アプローチ)。

    研究・実践連携推進

    • 臨床現場で得られた症例データを、将来の研究に還元可能な形式で記録・共有し、臨床研究との連携を強化すべき(例:臨床レジストリ、共同研究)。
    • 臨床試験を実行する際には、患者選定基準(どの因子仮説が強い症例か)、アウトカム指標、追跡期間設計、被験者層別化・共変量制御などに慎重を期す。

      兵庫県宝塚市の自費訪問リハビリ整体 リ・サンテとは

      自費訪問リハビリ整体リ・サンテは、兵庫県宝塚市にオープンした脳卒中の方や人工関節の手術をされた方、足腰にお悩みを抱えている方を始め様々な方に密着し自費(保険外)での自宅や施設への訪問型のリハビリ整体です。

      自費訪問リハビリ整体の特徴は

      自宅や施設を訪問し病院で行われるリハビリと整体院で行われる施術の要素を併せ持つ生活に密着した業界初の生活圏全般をサポートし生活の質の向上を目的とした”自費リハビリ施設となっています。

      リハビリ整体リ・サンテには医療機関で脳卒中後遺症の方や、人工関節の術後、骨折後などの身体を回復させるためのリハビリに従事し、高齢者のフレイル対策や介護予防、転倒予防の研修を受けた理学療法士(国家資格)の資格を持ったスタッフが在籍しています。

      ここで培った知識を生かし、自宅や施設を訪問させて頂き、皆さんのお悩み事をを解決するために一人一人の身体の状態を把握し完全個別式のリハビリ&整体サービスを提供しています。

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