この投稿は、『~兵庫高齢者特化型の介護予防・転倒予防~訪問リハビリ整体リ・サンテ宝塚』が高齢者のリハビリテーションに従事する医療従事者の方や、高齢者の転倒・介護予防に興味がある方に向けエビデンス情報を発信します。少しでも皆様のお役に立てればなと思っています。
脳卒中後のリハビリでは、歩行速度の向上が機能状態やQOLの改善につながることから、歩行速度の向上を目指すことが多いと思います。
しかし、地域での生活を成功させるためには、一定の速度で継続的に歩くことよりも、歩行速度を調節(増減)する能力の方が重要とされています。
今回は、「脳卒中による片麻痺者に対し目指すのは歩行速度は向上だけ?」についてと言うテーマでお送りしていきたいと思っています。
脳卒中による片麻痺者に対し目指すのは歩行速度は向上だけ?
本日紹介する論文
研究の目的
本研究の目的は、脳卒中後の慢性的な片麻痺患者において、歩行速度の増加(自己選択速度の120%)と減少(自己選択速度の80%)が運動学と足関節運動学の変化に与える影響を明らかにすること。
対象
●脳卒中後の慢性片麻痺(脳卒中後2.76±1.76年)を持つ15人(年齢±SD=61.52±8.78歳)。
●対照群:非神経学的障害者15名(59.32±10.52歳)。
方法
- 第1および第5中足骨頭、内側および外側踝、内側および外側大腿骨上顆、L5とS1の間の関節腔、大転子、腸骨稜、前上腸骨棘(ASIS)に解剖学的マーカーを設置
- トレッドミル上で、自己選択歩行速度(SSWS)を実施。その後、各速歩速度(FWS)、遅歩速度(SWS)の3種類の速度で歩行実施
- 各速度条件において、定常速度に達した後、30秒間の試行を3回連続して収集
- 各参加者について、各30秒トライアルの5歩が分析され、合計15歩の歩幅が分析
結果
歩行速度
- 各速度条件において、統計的に有意な群間差が観察された。
- 3つの速度条件のそれぞれにおいて、非障害者グループは脳卒中障害者グループより速く歩いた。(Table1:参加者の特徴)
立位時のピーク推進力
- 速度と肢体の間に統計的に有意な相互作用は見られなかった。
- スピードの主効果は統計的に有意であった。
- 3肢で平均すると、ピーク推進力は、SSWSおよびSWS条件と比較して、それぞれFWS条件でより大きかった。
- 歩行速度で平均すると、非麻痺側は麻痺側よりそれぞれ大きなピーク推進力を発生した。(Table2:3肢(麻痺肢、非麻痺肢、非障害肢)の徐行歩行(SWS)、自己選択歩行(SSWS)、速歩(FWS)条件における歩行立脚期のピーク推進力、推進力インパルス、ピーク制動力、制動インパルスの比較,Figure1:)。
立位時の推進衝動
- 速度と肢体の間に統計的に有意な相互作用が認められた。
- 非麻痺側では、SSWS条件と比較して、FWS条件では発生する推進衝動が大きく、SWS条件では小さく、それぞれ発生する推進衝動は小さくなった。
- 非麻痺肢では、SSWS条件と比較して、FWS条件では推進衝動が大きく、SWS条件とSSWS条件では差がなかった。
- 麻痺肢では、発生した推進衝動はSSWS条件と比較してSWS条件では小さく、SSWS条件と比較してFWS条件では差がなかった。(Table2,Figure1)。
立位時のピーク制動力
- 速度と肢体の間に統計的に有意な交互作用が認められた。
- 非障害側はSSWS条件と比較して、FWS条件ではより大きなピーク制動力を発生し、SWS条件ではより小さなピーク制動力を発生した。
- 非麻痺肢と同様に、非麻痺肢はSSWS条件と比較して、FWS条件ではピーク制動力が大きく、SWS条件ではピーク制動力が小さい。
- 麻痺側においても、SWSS条件と比較して、FWS条件で発生する制動力のピークは大きく、SWS条件で発生する制動力のピークは小さく、それぞれ、SWSS条件で発生する制動力のピークは小さくなった。(Table2,Figure1)。
立位時の制動衝動
混合要因分散分析では、速度と肢体の間に統計的に有意な交互作用が認められた(F(4, 80) = 8.85, p < 0.01)。ポストホック解析の結果、非麻痺肢はSSWS条件と比較して、FWS条件ではより大きな制動インパルスを発生し(p < 0.01)、SWS条件ではより小さな制動インパルスを発生した(p > 0.01)ことがそれぞれわかった。同様に、非麻痺肢では、SSWS条件と比較して、FWS条件ではより大きな制動衝動が、SWS条件ではより小さな制動衝動が、それぞれ観察された(p = 0.01)。しかし、麻痺肢では、SSWS条件と比較してFWS条件でより大きな制動衝動が観察されたが(p = 0.02)、SWS条件とSSWS条件では制動衝動は同等だった(p = 0.51 )。(Table2,Figure1)。
初期接地時の足首の角度
混合要因分散分析では,速度と肢体の間に統計的に有意な相互作用は見られなかった(F(4, 80) = 1.42, p = 0.23).しかし、スピードの主効果は統計的に有意であった(F(2, 80) = 4.81, p = 0.01)。3肢で平均すると、SWS条件ではFWS条件と比較して初期接触時の足首背屈角度が大きい(p = 0.03)ことが観察されたが、SWS条件(p = 1.00)またはFWS条件(p = 0.09)とSSWS条件ではそれぞれ差が観察されなかった。肢の統計的に有意な主効果は観察されなかった(F(2, 40)=2.64, p = 0.08)
Table3:3つの歩行速度における麻痺肢、非麻痺肢、非障害肢の足首の運動特性の比較について。Figure2)。
(3肢(麻痺肢、非麻痺肢、非障害肢)の徐行歩行(SWS)、自己選択歩行(SSWS)、速歩(FWS)条件における(A)踵打ち時の足関節角度、(B)爪先立ち時の足関節角度、(C)遊脚時の背屈ピーク角。エラーバーは標準偏差を示す。3肢で平均した場合、SSWS条件との有意差(p≦0.05)は†で示される。3肢平均でSWS条件との有意差(p≦0.05)を示す。色分けされた&は、3つの速度で平均化したときの各肢の麻痺肢との有意差(p≦0.05)を示す。
Toe off 時の足関節底屈角度
- 速度と肢体の間に統計的に有意な相互作用は見られなかった。
- しかしスピードの主効果は統計的に有意であった。
- 三肢で平均すると、SSWS条件と比較して、FWS条件ではつま先立ち時の足底屈が大きく、SWS条件では足底屈が小さいことが確認された。
- また、手足の主効果も統計的に有意に観察された。
- 異なる速度で平均すると、非障害側は非麻痺側および麻痺側と比較してそれぞれ大きな足底屈を示し、非麻痺肢と麻痺肢の間には差がなかった。(Table 3, Figure 2)。
スイング中の背屈ピーク値
- スピードと肢体の間に統計的に有意な相互作用は認められなかった。
- 速度の統計的に有意な主効果は観察されなかった。
- 異なる速度で平均すると、スイング中の背屈は、麻痺肢と比較して非麻痺肢で大きく観察された。(Table 3, Figure 2)。
まとめ
脳卒中では歩行速度の向上だけでなく、『信号が赤になる前に道路を渡る』『雑然とした地形』『濡れた床や滑りやすい床』『動いている車や人の前を通る』など、環境の要求に応じて歩行速度を安全に調節する能力が重要となります。
歩行速度低下に伴うブレーキインパルスの調節ができないことは、脳卒中後の慢性的な片麻痺のある人にとって安全上の脅威となり転倒のリスクが高くなります。
脳卒中後の歩行再トレーニングに組み込むために、歩行速度に応じて制動力を調節する麻痺側の能力を標的とした治療・アプローチの提供も必要かもしれません。
ぜひ、治療・アプローチの引き出しの一部にして頂ければと思います。
兵庫県宝塚市の訪問リハビリ整体 リ・サンテとは
リハビリ整体リ・サンテは、兵庫県宝塚市にオープンした地域の高齢者を始め様々な方に密着し転倒予防や介護予防を目的とした自宅訪問型のリハビリ整体です。
当整体院では兵庫県宝塚市の高齢者の方を始めとし、介護予防、転倒予防、体のケアを目的に筋力やバランス能力向上、動作指導を行う自費(保険外)の訪問リハビリ整体です。
自宅を訪問させて頂き病院で行われるリハビリと整体院で行われる施術の要素を併せ持つ生活に密着した‟業界初の生活圏全般をサポートする”整体院となっています。
リハビリ整体リ・サンテには医療機関で高齢者の身体を回復させるためのリハビリに従事し、高齢者のフレイル対策や介護予防、転倒予防の研修を受けた理学療法士(国家資格)の資格を持ったスタッフが在籍しています。
ここで培った知識を生かし、高齢者の介護・転倒予防、運動不足解消を目的に自宅を訪問させて頂き、高齢者一人一人の身体の状態を把握し完全個別式のリハビリ&整体サービスを提供しています。
当整体院では単なる『マッサージ』や『筋力トレーニング』だけで終わらず、最新の予防医学をもとに個人個人のお身体に合わせたプログラムを作成し60分間完全マンツーマンで施術させて頂きます。
※お身体の関節や筋肉の状態、バランス能力を数値化し、そのデータは後日グラフを作成しお渡しさせて頂きお身体についてお伝えさせて頂きます。
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